弁護士 大野 薫のコラム

2017.06.14更新

俳優の小出恵介さんが女子高生と性行為をしたとして話題になっています。

ところで,なんで小出恵介さん女子高生と性行為をしたのに逮捕されないのでしょうか。そこには,条例の定め方に理由があります。

大阪府では,禁止される青少年との性行為について,次のように定めています。(条例:http://www.pref.osaka.lg.jp/houbun/reiki/reiki_honbun/k201RG00000487.html)

(淫らな性行為及びわいせつな行為の禁止)
第三十四条 何人も、次に掲げる行為を行ってはならない。
…(省略)…二 専ら性的欲望を満足させる目的で、青少年を威迫し、欺き、又は困惑させて、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと。

つまり,「専ら性的欲望を満足させる目的で、青少年を威迫し、欺き、又は困惑させて」いなければ,青少年と性行為をすることを禁止していないのです。禁止していないことに対して,刑罰を科すことはできません。今回は,女子高生側が積極的だったという報道もあり,この要件を満たすとは言いがたいように思います。そのため,警察も,この要件を満たさないと考え,逮捕していないのだと思います。

もし,小出恵介さんが逮捕・起訴されることになったら,担当する弁護士は,この「専ら性的欲望を満足させる目的で、青少年を威迫し、欺き、又は困惑させ」たという要件を満たさないでしょ!と争っていくことになるでしょうね。

 

なお,条例の定め方は各都道府県で違うので,この記事は大阪での行為についてのみ妥当します。行為が行われた場所の属する自治体の条例が適用されるからです(地方自治法2条2項参照)。
たとえば愛知県は一切の制限を付することなく「いん行又はわいせつ行為」を禁止しています(http://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/200892.pdf)。
一方,東京都は「みだらな性交又は性交類似行為」というよくわからないものを禁止しています(http://www.reiki.metro.tokyo.jp/reiki_honbun/g1012150001.html)。

愛知県は過度広範な規制ではないか,東京都は漠然不明確な規制ではないか,と個人的には思うのですが,福岡県青少年育成保護条例事件最高裁判決(最高裁昭和60年10月23日)を経て,ずっとこのような規制が続いています。

投稿者: 弁護士大野薫